不動産部
1.152025
不動産部よもやま話 Vol.21 【改正不動産登記法】
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うちには家内が飼っている犬がいます。
名前は「もなか」8歳です。
決して私以外の人を噛むことのない利口な子です。
小さな奴ですが、群れを成すオオカミを先祖にもつイヌだけに、ちゃんとヒエラルキーを意識しているのでしょう。
下剋上を目論み
昨夏、総務部の康治くんから「こだわリッチ(黒毛和牛使用)」をもらい、この100gでなんとか手懐けてやろうとチャレンジしました。
一切れを3等分にし、毎日毎日少しずつ少しずつ、恩着せがましく与えてやりました。
しかし、
唸り声をあげながら「こだわリッチ」を持つ私の手ごと噛みつかれる始末。
無宗教の私が天に祈りささげ、「こだわリッチ」を与え続けましたが
結果は、あえなく失敗に終わりました。なお、限りなき挑戦はいたしません。
一方
彼女にはお家があります。
築20年、構造:畳造畳葺平家建、床面積:0.1632㎡、種類:居宅となります。
当時私が飼っていた愛犬「桃次郎」の為に建築したお家です。
施主は私。一級畳技能士の私が施工主でもあります。
もちろん、私に所有権があります。
窓もあります。
とても心優しく可愛らしい子でしたが、その後、桃次郎は他界。
占有者がいなくなったこのお家は6年間空家となっていましたが、うちの奴が「もなか」を飼い始めたことをきっかけに今度は「私」と「もなか」との間で使用貸借を開始しました。
※「使用貸借」とは無償で物や不動産を借りる契約のことです。対して、賃料などの対価を支払って物や不動産の貸し借りをすることを「賃貸借」といいます。
私へのリスペクトが欠落した「もなか」には、
①私がつくった家であること、➁私に所有権があること、③無償で住まわせてやっていること を何度も言い聞かせていますが、「ウォゥ~!」と唸り声をあげ、威嚇してくるばかりです。
ペットは飼い主に似ると言いますが、どうやら本当のようです。
さて、少し真面目な話になります。
2024年4月から改正不動産登記法が施行されました。
改正の背景には、所有者不明土地の増加にあります。
所有者がわからない土地や所在不明の土地は年々増加しており、2016年時点で所有者不明土地は410万haと、九州の面積(367万ha)を上回っており、2040年頃には720万haにまで広がると予想されています。
このことは、不動産取引への悪影響は勿論のこと、日本経済への影響をも懸念されるほどです。
そこで国の施策として誕生したのが、本改正の「相続登記の申請義務化」なのです。
この法改正(2021年改正不動産登記法)の内容ですが、
所有権登記名義人に相続が発生した場合、その相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知ったときから3年以内に、相続による所有権移転の登記を申請することが、基本的な義務となりました(不動産登記法第76条の2第1項)。
※単に自己が相続人となることだけでなく、具体的に不動産を取得したことを知ったときに初めて義務が生じるところがポイントです。
また、遺産分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した相続人は、その遺産分割の日から3年以内に所有権移転の登記を申請しなければならないという追加的な申請義務も今回の改正により加わりました(不動産登記法第76条の2第2項)。
ほかにも、相続登記申請義務化に関連する法令として、「相続人申告登記」という制度が新たに創設されています。
これは、3年以内に相続登記を申請しなければならないという相続人への義務負担を考慮し、その負担軽減を目的としてつくられたもので、相続登記の申請義務を負う者が、3年以内に、所有権の登記名義人に相続が開始したこと、自らがその相続人であることを登記官に申し出さえすれば、相続登記よりもより少ない提出書類によって、相続登記の申請義務を履行したものと見做されることとなりました。
なお、この「相続人申告登記」は、あくまでも相続登記申請義務の簡易な履行を認めたものに過ぎず、相続登記そのものではないことにも注意が必要です。
相続によって不動産を取得した者が第三者にこれを譲渡するような場合には、改めて相続による所有権移転登記を行った上で、第三者への所有権移転登記をする必要があります。
また、相続人申告登記の申出をした者が、その後の遺産分割によって所有権を取得したときは、遺産分割の日から3年以内に、相続による所有権の移転登記を行わなければなりません(不動産登記法第76条の3第4項)。
さらに、違反時の罰則が規定されました。
相続登記の申請義務のある者が、正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料に処せられることとなります(不動産登記法第164条第1項)。
※過料とはお金を取り立てられる金銭的な行政罰ですので、刑事罰である科料とは異なり前科はつきません。
ざっくりとではありますが、改正不動産登記法「相続登記の申請義務化」に触れました。
弊社では、登記の専門家である司法書士、土地家屋調査士とも連携しております。
詳しくお知りになりたい方はお気軽にご相談くださいませ。
さてさて、「もなか」に使用させてやっているお家です。
このお家は紛れもなく「家」ではありますが、「不動産」ではなく「動産」なので、私は相続登記や過料の心配なくあの世に行けます。
※不動産と動産の大きな違いは「動かすことができるかどうか」です。「不動産」とは、土地などの定着物で「動かすことができない」財産であることに対し、「動産」とは、お金や家具など「動かすことができる」財産のことをいいます。
おしまい
作 : 不動産部 安田