相談役コラム

会長コラム ~同人誌『飛翔』に投稿したコラム集~

経営理念の浸透

この前、我社で腕のたつ準社員大工が、「この現場が終わったら辞める」と、ともに働いている大工に洩らした。

遠い現場なのに手間賃をアップしてもらえないのが不満との事で、担当する監督はそれを知っていた様だった。しかし「彼だけが大工ではない、替わりは居る」とのことばに、私は今まで何を教えてきたのか失望し、明日現場に行って辞めないように話をして来ると専務に伝えた。

私が現場に出向き話をしたいと言っていると聞かされた大工は、その日の仕事を終えてから会社に立ち寄よったらしい。一応話はついた、とおり返し専務から連絡を受けた。

その現場は、施主から前回の工事でその大工の仕事ぶりを見て、次の工事もその大工を回してくれるならやってもらいたい、と注文され請け負った現場である。

それにしても棟上げ後、暫らくその現場を見ていないので、やはり行くことにした。会社から高速道路を利用して1時間少しかかり、距離にして42㎞と遠隔地現場であった。

永年の試行錯誤の末、我社の規則に遠隔地手当て制度がある。通勤時間が1時間を越える、または45㎞を越える通勤時間は、その内1時間を控除して基本給の50%の通勤手当てを支給するとなっている。社員及び準社員となっている常用大工にこの制度を適用して来たが、これが監督に浸透していなかったことが今回の騒動の原因だった。

我社は、経営理念の2番目に「社員の生きがいある人生を実現します」と顧客満足でなく社員満足をかかげている。当然に1番目は「住まいづくりを通して、世の中のお役にたちます」と我社の存在理由をかかげているが、2番目に社員(職人)を大切にする明確な意志表示をしているのが他社にない特徴。

私が経営理念を作った時、同友会の経営理念シートにどんな会社にしたいかを記入する欄があった。創業の精神みたいなものだが、不安定雇用の大工職人の待遇改善と、社会的地位の向上をかかげて腕のよい大工に仕事を絶やさず確保することが経営者の責任、と必死に頑張ってきた。

社員や職人を大切にするため、まず不公平をつくらない、能力に応じた待遇を保証する、そして安定した仕事を確保して定年まで働いてもらう。それを経営理念の柱にした。その肝心要が伝わっていない現実に、情けなさを感じざるを得なかった。

あくる日、現場に着くと雰囲気がおかしいのを感じた。協力業者の左官の親方が、「もめ

ている様で、あの腕の良い大工さんを逃がしたらあかんで」と忠告してくれた。

本人に弊社の規則集を見せて、遠隔地手当て制度はこのようになっているので今までの不払い手当てを支払います、と話した。支払い額は一日千円ほどであるが、先月からこの現場で働いているので遡って支払うと約束し、納得してもらった。

また、この現場はお施主さんの要望で年内に仕上げてもらいたいと云われていて、大工の増員は年末でもあり他の現場も目いっぱいの状況なので、何とかならないかと持ちかけたら、朝7時始業の早出残業も引き受ける、となった。自宅を6時前に出なければならないが、その方が交通渋滞にも巻き込まれなくて、早く現場に着けるとのことであった。

現場の事は現場監督に一任している関係で、この頃は遠慮して会社にこもりがちになっていたが、もっと現場に出向いて状況をつかみ、問題が発生しない様にしなければと反省をしている。

来年は社長交替を予定しているが、会長となっても社長を補佐して頑張りたいものだ。

2013年12月16日

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