相談役コラム
11.132017
森は地球環境を守る化学工場
現代文明は植物の化石燃料を使って、地球に大量の二酸化炭素(CO2)を放出してきました。人類が出現した四〇〇万年前から産業革命前までの大気中の二酸化炭素濃度は280ppmであったものが現在では360ppmと増えました。このため地球温暖化により二〇世紀中に地球の温度は0・3~0・6度上昇し南極の大氷棚が溶けて太洋を漂流したり、人類文明発祥のナイル川に豊かな恵みの水を供給し続けた、赤道直下のキリマンジャロ山頂の万年雪が二〇年で消滅するといわれています。
降雪量の減少、各地での異常気象などが観測されている現在、このまま二酸化炭素(フロン等)による地球の温暖化がさらに進むと、紫外線による皮膚癌の発症率の増加や海面上昇による沿岸域の海化や島の消滅も始まります。
五年前に京都で開かれた地球温暖化防止「京都会議」(COP3)では植林が温室効果ガスを吸収するものとして、新規(1990年以降)の植林によって抑制される二酸化炭素の発生量から差し引くことが出来るようになりました。地球にとって植林の重要性が人類の生存を左右する事態にまで立ち至ったことになります。
さて、樹木はどの程度二酸化炭素(CO2)を閉じ込める力をもっているでしょうか。二酸化炭素の固定装置である木材の組成は炭素(C)が50%、水素(H)が6%、酸素(O)が44%で他の元素をほとんど含みません。樹木は長い寿命の間に木材として大量の炭素を蓄積していき、樹木の木部は二酸化炭素(CO2)の固定装置といえます。樹木はどの程度CO2を固定しているでしょうか。
根本の直径が50cmで高さが15mの桧を例にモデル計算してみます。木を円錐形と考えると体積は0・98立方メートルとなり、重量は水分を除いた比重を0・4とすると390kg(0・98×0・4)となります。木部を構成している50%が炭素ですので15mの桧には195kg(390kg×0・5)の炭素が押し込められていることになります。
一モル(質量数12の炭素の同位体0・012kgの中に存在する炭素原子と同数の構成粒子)の炭素は12gで酸素は16gですからCO2は12+16+16=44gとなり、炭素とCO2の比率は12対44となります。したがって195kgの炭素は715kgのCO2からつくられたことになり、また空気中のCO2の体積は0・03%ですから、一気圧のCO2は1立方メートルに0・6g含まれることとなり、100m角の土地に120mの高さの容積となります。たかだか高さ15mの一本の桧は成長する間に膨大な量の二酸化炭素を酸素と炭素に分解して、地球温暖化を押さえ込んでいることになります。
国土面積の67%が森林である日本の森は二酸化炭素固定化の宝庫といえます。
温暖化防止ボン会議(COP6)ではブッシュ米政権の妨害と小泉政権の「京都議定書」死文化の政動を乗り越えて何とかまとまりましたが、二酸化炭素を売買する先進国の傲慢さは、我々人類に取り返しのつかないことをしているといわざるを得ません。
(2002・10・21)