工務部
9.182019
和気あいあいの工務部便り Vol.05 【事故ゼロで今日も安全作業】
先日、安全管理の一環として、「フルハーネス型墜落制止用器具使用作業特別教育」という技能教習を受けてきました。建築に携わらない方は耳にしたこともない方もいらっしゃると思いますが、要するに工事現場の高所作業での「命綱」のことを安全帯といい、万が一落下等の事故が起きた時に、最も安全性を確保できるものが「フルハーネス型墜落制止用器具」という安全帯です。
安全帯は大きく二つに分けて「胴ベルト型」と「フルハーネス型」とがあり、高所作業において、墜落による危険を防止するために、高さ2m以上の箇所で作業を行う場合に、作業床を設けることが必要ですが、作業床を設けることが困難な場合には、安全帯を使用することなどの措置が義務付けられています。
■フルハーネス型墜落制止用器具
■胴ベルト安全帯を使用していて墜落した場合
建設業に携わる多くの方々が身に着けたことのある胴ベルト型についてですが、万が一墜落してしまった場合、墜落制止はできたが、救助するまで腹部で吊られ、身体が「くの字」状態になり、痛みや息苦しさに耐えなければならず、時間の経過とともに身体の締め付けられた部分の負担が増加し、死亡に至る事象が発生しています。
こうした中で、2018年6月に、労働安全衛生法施工令が一部改正されて、一定の要件を備えたものでないと使用できない「安全帯」が「墜落制止用器具」という名称に改められたそうです。また既に、2019年2月1日からフルハーネス型墜落制止用器具が原則義務化となっております。
私たちの中では「安全帯」という呼称が定着していて、聞き易く言い易いのですが、時代の流れに伴い、建設業界も変わりつつあるので、流れに乗り遅れないようにしなければならないようです。ただ、世界的に観てみると、日本は大幅に遅れていて、この「フルハーネス型墜落制止用器具」は、ヨーロッパでは30年以上も前から一般化されているようです。安全性といえば日本は優秀な方だと思っていたのですが、とても意外で驚きました。それだけ日本の建設業界が遅れをとっているという事を知り、いかに安全性について日本政府が無頓着なのかを気づかされました。
今回、ようやく厚生労働省がフルハーネス型墜落制止用器具の義務化を決めた背景には、建設現場における墜落、転落死亡災害が後を絶たないことがあげられているようです。誰かが犠牲にならないと変わらないというのは本当に残念でしかならないですね。
私も6年前に現場にて労働災害事故を起こしました。当時は現場作業員として、2階の床高さの足場上での外壁下地の作業中に、バランスを崩し足場から転落、道路のアスファルト面に後頭部から落下し、頭蓋骨骨折と、くも膜下出血による頭部の内出血という全治2ヶ月ほどの大怪我をしました。その時ヘルメットは被っていませんでした。容易な作業だと思い危険予知もすることなく、完全に油断をしていた結果です。よく耳にする「慣れてきた頃が一番怖い」という、まさにその通りの出来事が起こってしまいました。奇跡的に命に別状はありませんでしたが、今でも首周りが痛むときがあります。
この事故をきっかけに、改めて建設現場は危険な所であり、安全対策についてより意識をするようになりました。一番は自分の安全に対する意識が弱く、注意力が薄かったことがこの事故の原因ですが、労働基準監督署の事故後の調査で、足場の腰の高さの位置に手摺が設けられていなかったことや、足場に隣接する電線に、絶縁防護管が巻かれていなかったこと等、会社としての安全管理不足があるということも浮彫りになりました。ただ、必ずしも万全な体制で作業ができるとは限らないと思います。建物の立地条件や環境次第で、現場によってはやむを得ない場合も多々あると思います。こうした中で、如何に事故を未然に予測して防ぐことができるかということが、現場管理者にとって必要な能力だと私は思います。こうして今この場にいられるのは、安全対策についてしっかりと考え、自分だけが気をつけていれば良いのではなく、多くの人が出入りする建設現場の中で、皆が安全に作業をすることができるよう常に注意を払い、周りの人に声掛けをしていき、理解を深めていくことが必要であり、その先導者になることが私に与えられた役目だと感じました。事故が起きて一番悲しむのは家族です。二度と自分と同じ目に合うような方がこの先現れないよう、これからも気を引き締めていきたいと思います。どうすれば未然に事故を防ぐことが出来るのかを常に頭に置き、事故ゼロで今日も安全作業をしていきたいと思います。
作 :工務部 山﨑