相談役コラム
3.12004
地震に耐える住宅を考える
阪神・淡路大震災以後、耐震対策として木造住宅の補強・改修工事をいくつかしてきたが、2000年の鳥取県西部地震や2001年の芸予地震をみると、古い木造建築物の構造や特性を見直すことが求められています。 本来、柔構造の木造にがんじがらめの合板耐力壁や筋違いの相性は「本当はどうなのだろう」と考えてみても、まだ伝統工法の耐震性能評価は確立されていません。 昨年、水回り設備(フロ・トイレ・キッチン)の改造、白蟻対策相談の来客がありました。訪問・調査の中で築70年ほど、30年前に増改築され、2間半通しの明るい縁側を特に気に入っておられることが分かりました。しかし、そのガラス戸の上には2階の壁と2階瓦屋根の重みがあり、上下階耐力壁の不釣り合いがみられました。平面図面的にも南北外壁の釣り合いも悪く、同じ「振幅」でも縁側の方がさらに大きく揺れ、建物全体がねじれやすくなります。 提案として①耐震補強の必要性、②既存木造土壁住宅の変形性能=粘り強さ、③剛でなく柔耐力壁の長所、④通気性のある耐力壁―― などの打ち合わせのなかでガラス壁から「木組み格子」の柔耐力免震壁(外壁モルタル塗・内壁左官塗壁)とし、基礎は後打ちコンクリートベタ基礎とし、土台と緊結して床下通気改良も提案しました。 阪神の震災直後、建築組合のボランティア活動として住宅の被害判定に参加。古い木造でもきちんと造られ、修理もされていた建物は、被害も少なく、修繕工事だけですむことに私も感心した話をする中で、水回りも含め、工事をさせていただくことになりました。 今回の工事の中で、和室床下より防空壕が見つかり、床下がり原因の1つが判明、良土で埋め戻し、戦後処理の1つが済みました。 神戸市内では、阪神震災の時、耐震性の低いアパート等で学生の死亡が多く、その日の5時46分から6時までの14分間で亡くなった人が92%ということは、いかに事前の対策が必要かはっきりしています。 耐震改修費補助や住宅改修費5%補助は、生活基盤・社会資本としての住宅を守ることでもあり、そのためにこそ正しく税金が使われる行政が必要です。