相談役コラム
7.252010
本社の増築工事
念願の隣地を購入し本社増築が進んでいる。 今の会社は1階が営業、2階が総務経理、3階が工務、4階が設計と会議室、と縦に伸びたエレベーターがないペンシルビルで、誰が何処にいるのか判らない。私は1日何十回と上がったり降りたりしている。 最近専務が足を痛め3階の工務へ上るのに難儀している。コピー複合機も各階に1台あり、経費的にも無駄が多い。多人数になる契約商談などは、4階に階段で上がってもらわなければならない。杖をついたお年寄りに上がってもらったときには心苦しい思いをした。不便この上ない構造であった。 狭い敷地いっぱいに建っているので自転車置場もなく、歩道に置いているが、この付近も近々、放置自転車禁止区域に入れられるので、敷地内に自転車置場をつくらねばならない。 そもそも、寺町通りに移転したときは、90年バブル絶好調の時で、大きな土地が買える訳がなく、今回はその1/4の坪単価で隣地を購入し、2倍半の敷地となった。90年購入の時、お隣に境界線で立ち合いをお願いしたときに、将来売却されるときには一番に声をかけてほしいと言っていた。それから20年が経った。 春から始まった工事は、ほぼ完成に近づき、8月末には事務所移転も完了する。毎日出来ていく隣の工事の仕事ぶりが楽しみで、工事が始まってからは9時出勤の私も8時前に行っている。早い職人は7時半頃には入っており、仕事前の段取りや一服を楽しんでいる。 建築工事は多くの専門職の集まりで一つの建物が出来ていく。それぞれの専門職が自分の果たすべき仕事をきっちりと納めて、次の職種工程へつないでいく。工事現場は自動車工場で言えば部品を次々と取り付けていく組立てラインのようなものである。 若い足場職人はてきぱきした仕事ぶりで、鉄筋職人は今回、同友会で知り合った新しい業者に頼んだ。雨が降り続いている中、黙々と基礎鉄筋を組立てている。こんな雨でも仕事を続けているのに感心し尋ねると、「雨で底が池になるまでは、帰ったら怒られる。」と。 基礎工事が終われば鉄骨職人は工場で加工してきた部材を組み立てていく。鉄骨工事が完了すれば建物の輪郭があらわになり、その骨組みに外壁のALCを取り付ける職人がはいる。重たいALCを道具を使ってはめこんでいくと外壁が完了する。 ここまでで躯体が出来上がり、これからは各職が入り乱れて現場に入ってくる。朝の現場前は材料や道具の搬入でごったがえしている。商店街角地で通学路にもなっているのでご近所にも気を使う。この工事の為に、近所に職人のための駐車場を借りたりもした。 屋根職人、金属建具職人、間仕切りやボードを貼る軽天職人、大工職人、左官職人、塗装職人、内装職人、タイル職人、シール職人と、各職が入ることによって建物は完成に近づいていく。 その間隙をぬうように各設備業者が入る。エレベータの組立職人二人は、半月も狭い穴の中で重たい部品を組立てている。電気職人、給排水職人などが、工事の進み具合に応じてうまくやってくる。 私も28才ぐいまでは現場で働いていたのでよく判るが、現場職人はみんな善い人たちである。自分の仕事にプライドを持って納まりを考え、次の工程に支障がないように仕事をしている。職人に感謝の毎日であるとともに、工事代金をきっちりと支払えるように経営者(発注者でもある)責任を全うしたい。人見 明