第１４６回　和気あいあいの家づくり

A.O様（ねっとわーく京都２１　２０２０年５月号より）

築90年を越える我が家は襖や障子が多く、広く取られた座敷に比べ個室は狭くどうにも使い勝手が悪い。駅近を生かし収益物件にしてはどうかという意見は今に出た話ではない。しかし祖父母の代より蔵や押し入れなどに溜め込まれた物の山は到底把握できる量ではなく踏み切る勇気もなかった。

そんな中友人の親戚にあたる営業担当の安田さんを通じ人見さんとのご縁に恵まれた。これも何かの巡り合わせ。来るべき時が来たのだと悟り、テナントを含めた賃貸併用住宅として舵を切ることとなった。目と鼻の先ほどの近さの公団での仮住まいは１年半ほどに及んだ。生活用品で溢れ返ったテーブルは使い物にならず、設計と現場監督の山口さんと母、私の3人でいつも地べたに資料を広げてのミーティング。ヤカンが沸き「ピーッ！」と鳴ると真っ先に駆けつけ止めてくれる。そんな山口さんに癒される楽しいひとときだった。

とは言え決してぬるくはなかった。
やるなら徹底的に。間接照明やタイルを駆使した複雑な構想を練る。彼には容赦なく厳しい要求をした。それを不憫に思いつつも・・・しかし譲れない。複雑なのは自宅だけではない。テナント、入居者間でのコーディネート、スケジュール管理。時に思わぬトラブルも発生する。それらは安田さんの迅速な対応と機転により何度も乗りきってきた。頼りない我々を引っ張ってくれる頼もしい存在だ。

完成した我が家でこの文を書いている。
今日から賃貸の入居開始だ。
「和気あいあいの家づくり」
その社是、確かに体現されていたと今感謝の思いと共に振り返る。