相談役コラム

会長コラム ~同人誌『飛翔』に投稿したコラム集~

賃金改訂と経営理念

今年も悩む賃金改訂の時期が来た。ここ数年は基本線は社長が創るので私は気が楽であるが、会長になって6年になる改訂作業、社長の判断に大きな齟齬はない。

弊社の給与体系は、基本給の号級と職能給からなっており、その他に各種資格手当てと役職給が加味される。毎年の社員の給与改訂は各々の社員の勤続年数が増す毎に号数(年令給)が上がるようになっており58才まで加算されていく。

建設業は、仕事が出来るようになると若い時から賃金が急カーブで上昇し、40代後半から下降していく。他業種の様な若い時は緩やかなカーブを描き、50代後半に最高額に達する様には上昇しないので、弊社の号級表は若い時は年12,000円の昇給があるが、年令が上がると1000円程の昇給となっている。

年を取っても毎年少しづつでも賃金が上がるのはやりがいにつながる、と素案を作るときに社員に云われた事があり、号級表改訂の際に定年近くまで昇給する号級表とした。その後65歳定年延長に際しては、スライドして昇給曲線を延ばしている。

職能給は10の評価項目に評価点1~3点がつけられ、最高50点満点、一点3000円で支給され、最高15万円となっているが、現在社員の最高点は47点である。

59才から定年前の64才の6年間は昇給はないが、上級役職に変更になった場合と、社内規定で決められている資格取得により基準賃金として昇給出来る。

但し、59才から資格取得に挑戦しても、合格率15%台の建築士や宅地建物取引士の資格はなかなか取れない。20代から40台前半までにかけて猛勉強をしなければ狭き門の資格の合格は難しい。

弊社には一級資格者には月2万円の資格手当てと、二級資格者は1万円の資格手当制度が有り、一級手当が付くのは、一級建築士と一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、一級建設業経理士と決められており、二級手当ては二級建築士や大工一級技能士など何種類かある。その他の多くの資格には特に手当てをつけていない。

役職員の各種資格総数は122となったが、一人で15も持っている社員もいる。私は4つである。建設不動産業は各種資格取得をめざす事で自己の能力向上で仕事が出来るようになる。不動産部で仕事をしている4人は全員、宅地建物取引士の資格を業務についてから2年以内に取得している。

今期の賃金改訂はコロナ禍の中で売上げが前年を下回り、経常利益は目標には及ばなかったが、6期続けての黒字決算となった事により、今年の給与改訂は賃上げ率を加重平均で3%と世間相場を若干上回る事が出来た。

30数年前、同友会に入会し学ぶ中で、就業規則と賃金規定を創るとき、社員が会議室に業務終了後集っていた。私が何をしているのかとのぞいたら、「社長は入らないでください。」と言われた。社員がまとまって弁護士を招いた勉強会を催していたのだ。労働組合のない弊社で会社のあり方を自主的に学んでいた。会社提案の就業規則と賃金規定は何度かの話し合いを経て、一年ごしで合意成文化が出来た。その当時の社員は、今は数名を残すのみである。

給与規定を現在の形にして30数年ほど経ったが、賃金改訂に不満をもって辞めていったり、明らかな不満を聞いたことがないのは、経営者として及第点を貰えるのではないかと思っている。

弊社の経営理念の2番目には「社員の生きがいある人生を実現します。」と掲げている。

社員が入社して定年を迎えるまで企業人生として良かったと、想い返してもらえるように大切にしてきた。社員の幸せがあってこそ、お客さま満足を提供出来るとの理念である。

ちなみに3番目は「限りなき挑戦を大切にします。」となっている。社員が新しいことに果敢に挑戦し、時代変化に求められる更なる能力の向上をめざしてもらいたいとの想いである。能力や素質に若干の不安があって入社した社員も、共に育つ精神で繋がる、大切でかけがえのない人財である。

2021年4月25日

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