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第74回   大きな天窓、反骨の部屋

林 政廣 様  (ねっとわーく京都21 2013年9月号より)

 20年も昔、86歳の父が、「わしはどこから(天国の旅に)出たらよいか」と言うのでお世話になっていた人見建設さんに、前庭に7畳余りの増築をしてもらった。反骨で世間的な価値に無頓着な父にはめずらしい発言であったが、大きな天窓のあるその部屋で末孫に戦争の話をし、そして、祭壇設営も弔問客の順路も希望通りに叶って、3年後旅立った。
 それから17年、今年96歳になる倹約家の母は、天窓の部屋で御天道様の動きに合わせて場所移動しながら、灯りもつけずに読んだり書いたり、縫い物したりしてきた。元祖節電。
 10年前、町内の神社の社務所新築。氏子24軒で毎月5千円積み立ててきたが、新しくこの地に住まいされた人々にも一口数千円の寄付を募った。父がいれば、宗教ごとに町内会を通して募ることには大反対をしただろう。
 250軒の寄付を得て社務所完成。寄進者の札をズラリと吊るした大看板が立てられた。「2千円の人が載ってるのに、うちの名前がない」。母が激怒。聞くと、氏子が寄進するのは当然だからと言う。しかし、うち以外の氏子は社務所の備品寄進者として載っている。「何で水屋を買うのに誘ってくれへんの!」
 母の怒りは頂点に。うちだけが1円も出してないことになったのだ。抗議するも通らず。「もうお前、笛を吹くことない」。代々祭りの笛方だったが笛を返す。30数万円が返金され、母はそれで7畳に専用トイレを造って要介護の身になった今、至極重宝している。
 その母が今年、ショートステイで入所日と退所日は1食しか食べないのに、3食1日分徴集される制度に抗議し、条例制定にまで成功。私と共著で、「食べてへんのに払うんか」(ウインかもがわ=7月刊)を出版した。
 人見建設さん提案の大きな天窓。近年の猛暑のためこの夏ふさいでもらったが、天まで突き抜ける反骨は私も継いでいく。

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