不動産部
11.152022
不動産部 よもやま話 Vol.16【営業安田の身辺雑記④】
「勉強しろ!」とだけは親として絶対に言わないと心に誓っていたにもかかわらず、先日、その言葉を発してしまった。
生後18年と5日目にして、高校3年生になる息子に、とうとう言ってしまったのである。
私が子供の頃、父は私に対して一度たりともその言葉を口にすることはなかった。
結局、その言葉を発することなく、7年前、生後80年と9日目にして父はこの世を去った。
一方、母はというと、一般的な家庭で見受けられる程度ではあるものの「勉強しなさい」と言っていた。私は、母のその言葉に厭忌の情を抱いていたことを覚えている。
親として子を心配するが故のことと子供なりにわかってはいたが、実際に言われると余計にやる気が失せるのである。
父がそうしなかったのは、そんな偏屈な私の性格を見透かしてのことだったのであろうか。
「よかったなぁ」
「ようやったなぁ」
と、むしろ結果に対する褒め言葉だけは欠かさず投げかけてくれたことが印象に残っている。
あの頃、
「親父は信用してくれている」
「信用してくれる親父を裏切りたくない」
という想いが私の心の奥底に根付いていた。これが父の策略だとしたならば、私は父の手のひらで踊らされていたのだろう。
だからと言って一生懸命やったと自負できるほど勉強した覚えもない・・・。
「平均点よりチョット上あたり」と目標を掲げ、勉強は最低限に頑張った。
しかし、もし口喧しい両親二人に育てられていたならば、私は勉強なんて一切しなかったであろう。
怠け者で臍曲がりな私。
そのポテンシャルを少しでも多く引き出してくれたのは間違いなく父である。
それだけに亡き父には感謝の念に堪えない。
その後35歳にして私も一端の親になり、亡き父をお手本に息子に接しつづけるつもりだったのだが・・・。
その日、息子が小遣いを使って「キングダム」というマンガの新刊を買ってきた。
因みに、息子はマンガ好きで、書棚には夥しい数のマンガが整然と並んでいる。
その中で唯一「キングダム」だけは彼に借りて私も愛読している。
前号からの続きが気になっていて、最新刊を目にした私は、
「先に読ませてくれ!」
と息子に申し出たところ、
「俺が読んでからに決まっているやろが!」
と彼は語気を強めた。
その時です。
私は反射的に
「お前は勉強しろ」
と口走ってしまったのである。
ハッと我に返るが、時すでに遅し。
「これは俺のマンガや!自分が先に読みたいからと言って『勉強しろ!』とは卑怯やぞ!」
「もうお父さんには今後一切貸さへんわ!」
と返ってきた。
言わないと誓った言葉。それもマンガが読みたいが為に言ってしまうとは…。「やってしまった…」と暫し反省。
30分ほどして、自分の部屋にこもっていた息子が現れた。そして「ほいっ!」とキングダムの最新刊を手渡してくれた。
「もう読み終わったし。読みーや。」
と一言。再び部屋にこもり、いつものように猛烈に勉強を始めた。
私の手のひらで踊っていると思っていた息子は、そこには不在であったようである。
私は親父越えを出来ず仕舞いであったが、息子は既に私を越えていることを確信した出来事であった。結局、私は、息子に対して「感謝」のみならず「尊敬」の念に堪えない。
おしまい
おまけ
不動産≪豆知識≫
2020年7月10日から法務局による「自筆証書遺言書保管制度」が開始されています。この制度を利用することで、面倒な遺言者死亡後の家庭裁判所での検認手続が不要となり、より速やかに相続手続ができるようになりました。法務局へ納める手数料は3,900円です。自筆証書遺言書の作成をご検討の方にはおススメの制度です。ご興味をお持ちに方は、下記URL 法務省「預けて安心!自筆証書遺言書保管制度」をご参考ください。
【 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html 】←法務省HPに飛びます
作 :不動産部 安田